これまで行われてきたプロジェクト

学内だけでなく、アメリカ、NIH、ミズーリ大学、ピッツバーグ大学、京都大学、
熊本大学、同志社大学などと新薬開発を行っています。また国内企業との共同研究
も進めております。これまでの創薬とは異なる新しい学術領域の基盤形成を目指し
ています。また、がんウイルスに対する治療薬開発も手掛けています。


多剤耐性菌を標的とした抗菌剤の開発
1.独自のスクリーニング
独自に開発したhigh-through putだけにとどまらない、指数的に高感度かつ容易に活性を検出することに成功しました。使用する薬剤もごく少量です。構造活性相関でも、これまで見逃されてきた薬剤を複数見出し、新たな合成展開の知見だけでなく、いくつかの有望なリードを見出してきています。
当院では耐性を有する臨床分離株を多数、揃えており、研究体制は万全です。


抗ウイルス剤の開発
1.抗HBV剤
我々はB型肝炎を引き起こすHBVに対する創薬を開始しています。

HBVはRNAを複製の過程で利用するウイルスであるため(実際にはDNAを出芽粒子内にもつDNAウイルス)、逆転写酵素が必須です。このHBVに対してはこれまで抗HIV剤が応用されてきましたが、近年Bristol-Myers Squibb社よりエンテカビルが発売され特異的な治療が行われ始めています。HIV同様、単剤での治癒は困難であり、多剤併用が望まれますが、まだ併用薬はありません。

2.抗HIV剤
DNA合成に必要な、4つのヌクレオチドによく似た構造を持つ核酸系逆転写酵素阻害剤(nucleosidereverse transcriptase inhibitor, NRTI)の開発を行っています。NRTIはDNA合成に必要な3'-OHを持っておらず、DNA鎖に取り込まれるとその合成を阻害します。
我々はこれまでのNRTIの常識 (3'-OH欠失) をくつがえす新薬(EFdA)
を開発しました (J. Biol. Chem.2009)。この薬剤はがんウイルスにも効
果を示すことを報告しています (Nucleic Acids Res.2011)。

2012年夏に米国Merck社とライセンシングしています。

J Biol Chem2009から引用
HIVの侵入を阻止する薬剤(Int. J. Biochem. Cell Biol.2009,  J. Biol. Chem.2010)や新しいターゲットとしてのRevなどのHIVアクセサリー遺伝子に注目して薬剤開発を進めています(Int. J. Biochem. CellBiol.2010)。動物での効果も検討しています(Biochem. Biophys. Res. Commun.2012)。

3.抗HIV剤(インテグレース阻害剤)
京都大学在籍中に日本たばこと共同開発した抗HIV剤(J Med
Chem
2006,  J Virol2008)は、2012年8月に米国FDAから承
認され、臨床で使われる様になりました。この薬剤の剤型は他の
薬剤との合剤であり、1日1回たったの1錠でHIV感染症の治療を
世界で初めて可能としたものになっています。国内でも2013年
3月に認可されました。また、2016年7月からGenvoya配合剤と
しても売り出されています。継続研究でJ Virol 2022も報告し
ています。

 

抗がん剤の開発
1.ウイルス発がん治療薬
EBウイルスによってがん化した細胞を特異に排除する治療薬をヤマサ醤油株式会社・東京医科歯科大学・国立成育医療研究センターと共に開発しています。特に慢性活動性EBV感染症に効果を示します。これまでの治療法としての血液幹細胞移植(骨髄移植)に頼らない治療を目指します。平成26年度から医薬品として使用できるか、安全性試験を開始しており、マウスやラットで安全性を確認しました。平成26年度と28年度は、それぞれ文科省とAMEDの大型予算、橋渡し研究加速ネットワーク事業に採択されています。平成29年度からはAMED「革新的がん医療実用化研究事業」に採択され、開発を進めています。

その他
1.レトロウイルス薬剤耐性
容易に獲得されるHIV薬剤耐性を、分子生物学的に解明しています。特に逆転写酵素阻害剤の耐性機序(Int. J. Biochem. Cell Biol.2009)や侵入阻害剤の耐性機序(J. Biol. Chem.2009, J. Mol. Biol.2009,  J. Biol. Chem.2010)に関して行っています。

臨床分離HIVの耐性機序の解明も行っており逆転写酵素のこれまで耐性に関わってこないと考えられていた領域におこるN348I変異が多剤耐性に関与することを報告しています。(J. Virol.2008,  Antiviral Res.2009,  J. Biol. Chem.2010)。他の変異も見出しています(PLoS One, 2011,  J. Biol. Chem.2012)

2.サポート体制
東北大学は全学規模で文部科学省最先端基盤事業「化合物ライブラリーを活用した創薬等最先端研究・教育基盤事業の整備」に採択され、日本の7拠点研究施設として研究をしています。東北大学薬学部、多元物質研究所、大学病院、メディカルメガバンク機構とも共同開発を開始し、ALL JAPAN体制での創薬を行います。

3.その他の抗ウイルス剤の開発
まだ詳しくは書けませんが、最近話題のウイルスに対する抗ウイルス剤の開発も始めています。MTAを結んでのアウトソーシングにも対応します。いろいろな条件に応じますので詳しくはご連絡ください。秘密は完全に守りますので、企業からのスクリーニングのみなど、ご相談にのります